「夕凪の街 桜の国」のネタバレ、あらすじと感想!こうの史代先生の名作 | やまねこの漫画ブログ

「夕凪の街 桜の国」のネタバレ、あらすじと感想!こうの史代先生の名作

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「夕凪の街 桜の国」のネタバレ、あらすじと感想を紹介します。

この作品は、「広島のある日本のあるこの世界を愛するすべての人へ」という一文で始まります。

こうの史代先生による「夕凪の街 桜の国」は、広島に原子爆弾が投下された10年後、昭和30年を舞台とした「夕凪の街」と、現代を舞台とした「桜の国」(一)(二)によって構成されています。

多くの戦争漫画が戦時中を描いているのに対し(これを否定しているのではありません)、この「夕凪の街 桜の国」では「戦後」、そして「今も続いている戦後」を描いています。

 

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「夕凪の街 桜の国」のネタバレ、あらすじ

夕凪の街

原子爆弾が投下された10年後、舞台は昭和30年の広島です。

主人公である平野皆実(ひらのみなみ)は会社勤めをしていました。職場の同僚とたあいのない話をして盛り上がる「日常」が、広島にも戻っていました。

ある日、水戸に住む実弟の石川旭(いしかわあさひ)からハガキが来ます。ハガキをじっと見つめる母(平野フジミ)に対して皆実は、「いまにおカネを貯めて連れてったげるけえ!」と励まします。

 

バラック小屋に、二人で住んでいる皆実とフジミ。夜になり銭湯に行き、自分の左腕の傷を見つめる皆実。周りの女性の体にも傷が目立ちます。

そして、被爆直後の光景がフラッシュバックします。

「ぜんたい この街の人々は 不自然だ」

「誰も あのことを言わない いまだにわけが わからないのだ」

 

皆実は会社の同僚の打越から、ハンカチをプレゼントされます。

そして打越から皆実に対し好意が伝えられますが、またも被爆直後の光景がフラッシュバックします。

皆実は「ごめんなさい」と言って、走って逃げてしまいます。

 

―「お前の住む世界は そっちではないと 誰かが言っている」―

その後、皆実は会社を休んでしまします。力が抜けてしまったと…。

―「このお話はまだ終わりません 何度夕凪が終わっても終わっていません」―

そして、35ページ目。あなたの心にどのようなものが沸き上がるでしょうか。

 

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桜の国(一)

石川七海(いしかわななみ)は、野球の練習に励んでいる活発な小学校5年生です。

「石川」という苗字のせいで、みんなからはゴエモンと呼ばれています。

家のすぐ近くに住む、おしとやかな性格の利根東子(とねとうこ)と大の仲良しです。

 

七海は父である石川旭(いしかわあさひ)、弟の石川凪生(いしかわなぎお)、祖母の平野フジミと暮らしています。

弟の凪生は、ぜんそくのため入院していて、祖母のフジミもその付き添いで、いつも家にはいません。父の旭も会社勤めで忙しく七海は「鍵っ子」です。

 

ある日、七海は野球の練習をさぼって東子とともに、凪生が入院している病院に向かいます。

七海は野球のグランドで拾った桜の花びらを、凪生の病室に持ち込みます。

そして東子とともに下敷きを使って、桜吹雪を再現するのでした。

大いに喜ぶ凪生の姿がありましたが、そこに祖母のフジミが現れ、ひどく叱られる七海でした…。

 

桜の国(二)

桜の国(一)から十数年後…。

七海は社会人に、凪生は医大生に、父の旭は会社を定年退職していました。

七海は最近、父旭の行動がおかしいことに気付きます。電話料金が先月の5倍になっていたり、散歩と言いながら2日も帰ってこなかったりと…。

 

ある夜父の旭は、また散歩だと言って出かけてしまいます。そのあとをついていくことにした七海。

そこで偶然、昔仲良くしていた利根東子と出会います。

一緒に父旭を尾行することとなった、七海と東子。

 

二人は、旭が広島行きの夜行バスに乗り込む姿を見てしまいます。勢いで七海と東子も、そのバスにこっそりと同乗するのでした…。

そこから、この物語はその本質たる「ヒロシマ」へと向かっていきます…。

 

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「夕凪の街 桜の国」の感想

「夕凪の街 桜の国」(全1巻)は、こうの史代先生により2003年から2004年に執筆された作品です。

2004年に初版本が刊行され、第9回手塚治虫文化賞新生賞、第8回文化庁メディア芸術祭大賞をそれぞれ受賞しています。

この「夕凪の街 桜の国」という作品は、全103ページで構成されています(あとがき等を含む)。

漫画の単行本としては、ページ数は非常に少ないほうといえるでしょう。

 

また作者である、こうの史代先生の絵のタッチも柔らかであることから、手に取りやすい作品と言えるでしょう。

しかし、内容は非常に濃密な作品です。

原子爆弾投下直後をあえて描くのではなく、その10年後の「ヒロシマ」から物語は始まります。

灼熱の閃光が放たれた昭和20年8月6日を生き延びた人々。戻りつつある日常。

 

しかし人々の心の中には、あの日の光景が鮮明にやきついているのです。

※ここで広島をあえて「ヒロシマ」と表記したのは、被爆国の都市として表現したかったためです。

「夕凪の街」の主人公、皆実もその1人です。皆実は「うちはこの世におってもええんじゃと教えて下さい」と…。

 

打越は言います。「生きとってくれてありがとうな」と。

「桜の国」の主人公、七海も自身が小学生だった時に直面している、被爆者である祖母フジミの死。そして同じく被爆者である母の死。

何より七海自身が、被爆二世であること。

 

時代は違いますが、2人はそれぞれ「ヒロシマ」の記憶を持ち続けているのです。

「戦争は終わったという形式」はとられていますが、「戦後」は今日もこれからも続いていくのです。

 

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