詩歌川百景(うたがわひゃっけい) 1巻のネタバレ、あらすじと感想を紹介します。
吉田秋生先生による、あの「海街diary」のスピンオフ作品。
「海街diary」の最終巻9巻に収録されている番外編「通り雨のあとに」は、この「詩歌川百景」のプロローグ的な存在です。
つまり、「海街diary」の主人公・浅野すずと一時期、親同士の再婚の関係で姉弟(してい)の間柄であった飯田和樹(いいだかずき)が本作の主人公なのです。
映画化もされ話題となった「海街diary」と、この「詩歌川百景」は有機的につながっています。
舞台は海街・鎌倉から一転し、山形県北部の山あいの小さな温泉町へ。
「詩歌川百景 」1巻には第1話から第4話が収録されています。
詩歌川百景 1巻のネタバレ、あらすじ
第1話 町いちばんの美人
季節は、夏。カジカガエルとセミの鳴く頃。
山形県北部、河鹿沢(かじかざわ)温泉。
―そこは山あいの小さな温泉町―
渓谷の地形に平地はほとんどなく、町や人々は岸壁にへばりつくように建てられ、生活しています。
老舗温泉旅館「あづまや」で湯守(ゆもり)見習いとして働く、飯田和樹(20歳)。
小学生の異父弟、飯田守(いいだまもる)と二人暮らしをしています。
和樹の仕事は多岐にわたり宿泊客の送迎に始まり、今はベテラン湯守の倉石繁(くらいししげる)のもとで修業中の身です。
いつものように宿泊客を、最寄駅から宿まで車で送り届ける和樹。
その横をさっそうと、1人の女子高校生が自転車で追い越していきます。
それは、小川妙(おがわたえ)。
あづまやの大女将、小川民子(おがわたみこ)の孫娘で、現在の女将の姪にあたります。
和樹は認めてはいないが、町の人の中には『町いちばんの美人』と呼ぶ人もいます。
妙は県内一の進学校に通う、高校3年生(18歳)。
東京で生活していたが、3年前に両親が離婚したことをきっかけに、母親の小川絢子(おがわあやこ)とともに故郷であるこの町に引っ越してきたのです。
妙は小さい頃からこの町を訪れていたので、町の人とも顔見知りの間柄です。
当然、和樹やその同級生、森野剛(もりのつよし)、林田類(はやしだるい)とも幼馴染です。
妙は、学業のかたわら「あづまや」で中居のアルバイトをしています。
妙の頭の中には、もう常連客の情報が入っていて、倉石からも『あいつはこの商売案外むいてるな』と言われるほどです。
和樹はいつも妙から、『修業がたりないな』とからかわれてしまう日々なのです…。
第2話 帰らぬ人
季節は間もなく、紅葉の時期をむかえようとしています。
和樹は今日も、朝から忙しく働いています。
「あづまや」の温泉は硫黄分を含んでいるので、配管類の清掃を欠くことはできません。
そうしないと「湯の花」が排水溝を詰まらせてしまうためです。
―『湯守の仕事の中でもっとも大変な仕事の一つだ』―
妙は詩歌川にかかる「不帰橋」(かえらずのはし)のたもとで、大女将、町の診療所の医師・畑中愛(はたなかあい)先生、看護師の安藤、そして守の前で、観光ガイドの練習をしています。
そこで大女将から、町のシンボル的な山である「帷子岳」(かたびらだけ)。
そして「不帰橋」にまつわる言い伝えを教わるのでした。
そのおり「あづまや」に、常連客である山本氏が訪れます。
山本氏の息子は、10年前に帷子岳にむかったきり、行方不明になっていたのでした…。
第3話 美女は野獣
晩秋、落ち葉の積もる頃。
和樹は森野剛から、妙が進学しないというウワサ話を耳にします。
妙の実父は新たな世帯を設けており、そこで子供が生まれるので養育費が払えなくなったのが理由であるとのことでした。
和樹は直接、妙にその事実を確かめてみるのでしたが…。
ある日和樹は、女将の寿子(としこ)と妙の母・絢子から事務所に呼び出されます。
そこで和樹の実弟・智樹(ともき)が、この町にある慈仙寺(じせんじ)に空き巣に入って、お布施を盗んだとの話があると告げられます。
和樹は8月の終わり頃、その話を耳にしていましたが、女将や会社には報告していなかったのです。
寿子から『こっちは宿屋だからへんな噂が立つのはねぇ』とやんわりと追い詰められる和樹。
そんな場面に妙があらわれて…。
第4話 冬の花
季節は年末、雪の積もる頃。
大雪の日は和樹を含め皆、夜も明ける前から除雪作業に忙しく働きます。
―『年末の温泉旅館は年越しの準備に追われ いつも以上に忙しい』―
和樹と妙は、倉石とともにミズキ(水木)の枝を取りに向かいます。
ミズキは、この地方に伝わる正月飾りに使う木です。
そこで倉石から、なぜミズキを使うのか、その由来を教えてもらう智樹と妙。
ミズキには、火除けの意味があるのだと。
―『山火事が起こったら 昔はこんな谷間の集落は打つ手がない』―
―『ほんとうに打つ手がない』―
和樹の頭の中に、ある光景がフラッシュバックします。
それは和樹がまだ幼かった頃のこと、父の母への暴力と怒鳴り声と何かが壊れる音…。
―『智樹と二人散らかった部屋の隅にうずくまり 耳をふさぎ窓の外を見ていた』―
そして河鹿沢温泉は、12月31日大晦日を向かえるのでした…。
詩歌川百景 1巻の感想
吉田秋生先生の前作「海街diary」の鎌倉という、海に面した開放感のある世界から一転。
「詩歌川百景」は山あいの小さな温泉町が舞台です。
そこでは誰もが知り合いで、でもそれゆえ、息苦しささえも感じてしまう…。
いつも快活で明るい小川妙。
しかし彼女が小学校時代に見せた涙。
その姿が和樹の脳裏に、今も鮮明に残っています。
―『あの時お前は泣いていた』『なぜだ?』―
和樹は大人になった今も、妙の涙の理由がわかりかねています。
和樹自身も、その生い立ちに暗い過去を持ちます。
父の母に対する暴力、暴言。
そしてその母と弟との別れ。
その弟・智樹は、今はすさんだ生活を送っていること。
―『どんなに逃げても 現実は影のようについてくる』―
でも今、和樹には異父弟の守というたった一人の家族がいます。
その家族を守るため、和樹は湯守見習いとして人一倍頑張っています。
ベテラン湯守の倉石、大女将に見守られながら。
森野や林田の同世代仲間たちと一緒に。
時には妙に、からかわれながらも…。
温泉町の皆に、和樹は愛されている存在だと感じました。
なお作中には「海街diary」の主人公、浅野すずも登場します。
どの様に登場しているかは、読んでみてのお楽しみですね。
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