さんさん録 1巻のネタバレ、あらすじと感想を紹介します。
あの「夕凪の街 桜の国」、「この世界の片隅に」で有名な、こうの史代先生の隠れた名作。
それが本作「さんさん録」(全2巻)です。
妻に先立たれた、初老の主人公・参平。
そしてその妻が残した、分厚いファイル『奥田家の記録』。
息子夫婦と同居することとなった参平は、『奥田家の記録』片手に「主夫」として、第二の人生をスタートさせることになります。
「さんさん録」第1巻には、全17話が収録されています。
さんさん録 1巻のネタバレ、あらすじ
第1話 さんさん録
『妻が突然 逝ってしまった』…。
残された夫の奥田参平(おくださんぺい)は、一人むなしい日々を送っています。
そこに、息子の奥田詩郎(おくだしろう)がやってきて、詩郎の家族と一緒に住まないかと持ち掛けられます。
参平は、特段反対する理由もなかったため、詩郎家族と一緒に暮らすことにしました。
こうして参平は、詩郎とその妻である礼花(れいか)、一人娘の乃菜(のな)と同居することとなったのです。
慣れない同居生活に少々緊張気味の参平。
引越荷物を整理していると、一冊の分厚いファイルを発見します。
それは亡き妻、鶴子(つるこ)が書き残した『奥田家の記録』なのでした…。
第2話 一寸先は闇鍋
礼花の実家から、家庭菜園で育てたという野菜が送られていきます。
参平は思わず、その野菜を使って料理がしたいものだと口走ってしまいます。
(本当は、料理などしたこともないのに…。)
困った参平は慌てて『奥田家の記録』を読み返し、肉じゃがを作ることにしたのですが…。
話3話 約束
小学2年生の乃菜は、クリスマス会に着ていく洋服が気に入らず泣きじゃくり、母親の礼花を困らせています。
その菜乃から参平は、『しぬと約束は破るのもなのか?』と問われます。
参平は『奥田家の記録』を読み返し、亡き妻・鶴子が残した一枚のメモを見つけます
そこには、『秋になったら乃菜ちゃんに下から二段めの包みをあげる事』と記されていました。
参平は、亡き妻と暮らしていた家へと向かうのでした…。
第4話 上へ下へ
年末、奥田一家は大掃除に忙しい一日です。
掃除中も詩郎と礼花はとても仲よく、参平は何となく疎外感を感じてしまいます。
『奥田家の記録』を読み、参平も自分の部屋の掃除を始めますが…。
第5話 ぼたん雪
とある寒い日、参平は家の廊下にボタンが落ちているのを見つけます。
参平は、礼花のシャツの胸元のボタンがないことに気付きます。
しかし、場所が場所だけに言い出せない参平。
『言えんぶん気になる』『気になるのがまたイヤ!!』
ジレンマに陥る参平。
参平は礼花が外出している間に、『奥田家の記録』を読み、ボタンをシャツに縫い付けることにしましたが…。
第6話 としより日和
参平と礼花が家で過ごしていると、詩郎から一本の電話が入ります。
家に会議の資料に忘れたので、会社まで届けに来てほしいとのこと。
参平が、散歩がてらその書類を詩郎の会社まで届けに行くことになりました。
と、その帰り道、詩郎と見知らぬ若い女性が二人でいるところを、目撃してしまいます。
その女性は、『わたしは本気ですから』『また六時にここで待ってますから』と言って詩郎の腕をつかんでいます。
えらいところを目撃してしまったと、参平…。
どうしても気になってしょうがない参平は、ある行動に移ります…。
第7話 かぜの館
詩郎、礼花そして乃菜は、カゼをひき高熱を出して寝込んでいます。
参平は、家族の看病をすることになりました。
カゼひきの看病などしたことのない参平。
『奥田家の記録』を読み、『おかゆさん』を作るのでしたが…。
第8話 生命の危機!?
礼花は、広島に住む自分の父親が入院するため、実家に帰省することになりました。
礼花の代わりに、奥田家の家事をすべて行う事となった参平。
料理に掃除、片付け等『奥田家の記録』を片手に無難にこなしていきます。
しかし数日も経つと、空しさが参平をおそいます。
『食うために働き 働くために食い 片づけてはちらかし ちらかしては片付け…』
乃菜から、『なら せねばよい』と言われ、参平は家事をするのを一切やめてしまいますが…。
第9話 ぽかぽか録
とある陽気のいい日、詩郎と礼花はケンカをしています。
それは、礼花が以前勤めていた花屋で働きたいと言い出したのに対し、詩郎は家計が苦しいわけでもないのに、わざわざ外で苦労することはないと反論したのがきっかけでした。
参平は詩郎と礼花の言い分を聞いた上で、『奥田家の記録』をあらためて二人の前に差し出します。
そして、奥田家の「主夫」をやると二人に提案します…。
第10話 二番煎じ
夜、参平が家計簿をつけていると、詩郎が酔っ払って帰ってきます。
その詩郎を送ってくれたのは、仙川イオリという若い女性で、人材会社に勤務しているとのことでした。
参平はかつて、『わたしは本気ですから』と詩郎の腕をつかんでいた女性と、同一人物だとすぐに気が付きます。
イオリは『初めまして』と名刺を差し出し、参平に丁寧にあいさつをするのでした。
動揺を隠しきれない参平。
礼花に代わって、お茶を入れて出すことになりましたが…。
第11話 ひこう少女
参平が一人留守番をしていると、乃菜が学校から帰宅します。
そして、算数のテストを参平に差し出すと、65点という微妙な点数でした
参平は教科書片手に、乃菜に勉強を教えますが…。
第12話 理想と現実
花屋に勤務している礼花でしたが、昨夜の夕食はカレーをたくさん作ってくれたのでした。
『うまい うまい』と言って皆食べます。
今日の夕食のメニューを考える参平。
昨日の残りのカレーだけでは、芸がないなあと思案に暮れています。
そこで参平は『奥田家の記録』を読み返し、「きゅうりなます」を作ろうと思い立ちますが…。
第13話 母の日
時はさかのぼり、詩郎と礼花が初めて出会った時の事。
詩郎の勤める会社に、礼花が入社式のお花の準備でやってきたことに始まります…。
思っていたよりも、早く仕事が終わった礼花。
会社に置かれている観葉植物がしおれているのに気付き、ついでに水やりを始めます…。
第14話 家人の背中
参平は家に一人。
『奥田家の記録』を読みながら、シャツにアイロンがけをしています。
ふと亡き妻、鶴子が生前アイロンがけしていた姿が、頭によみがえります。
さらに参平が少年時代、祖母がアイロンがけをしていた記憶までもがよみがえってくるのでした…。
第15話 三度笠
急な雨、参平は急いでベランダに干していた洗濯物をとりこみます。
ふと傘立てに目をやり、乃菜が傘を持たずに登校したことに気付きます。
参平は、傘を学校に届けに行きますが…。
第16話 明暗
夏の日の朝、参平が起きぬけにベランダに向かうと、思わず『暗!!』と叫んでしまいます。
それは、乃菜の学校の暗幕をベランダに干していたからでした。
乃菜は夏休み中です。
詩郎と礼花は仕事に出かけます。
ベランダ越しに天気を確認した参平。
『奥田家の記録』を読み、『今日は布団を干そう』と思い立ちます。
乃菜にも手伝いを求めます…。
第17話 真夏の傷
詩郎と礼花そして乃菜は、礼花の実家に帰省します。
一人残された参平。つまらない時間が過ぎてゆきます。
参平がベランダで物思いにふけっていると、あのイオリが訪ねてきます。
『せっかくだし お昼でも一緒にどうだね』と参平はイオリを誘いますが…。
さんさん録 1巻のまとめと感想
「さんさん録」1巻には、双葉社の雑誌「漫画アクション」に2004年12月から2005年8月までに連載されたものが収録されています。
こうの史代先生と言えば、「夕凪の街 桜の国」、「この世界の片隅に」が代表作に上がりますが、この「さんさん録」は前記二つの作品の間の時期に執筆された作品です。
「夕凪の街 桜の国」で未だ続いている戦後を、「この世界の片隅に」で第二次世界大戦下に生きる人々を描いた、こうの史代先生。
前記二作品の印象があまりにも強く、戦争漫画家というイメージを持つ人も少なくはないでしょう。
しかしそれは、「ヒロシマ」に生まれた、こうの史代先生が「描かななければならなかった作品」と言えるでしょう。
本作「さんさん録」は、良い意味での「日常の淡々とした出来事、でも毎日は特別であること」が描かれます。
先生特有の、スクリーントーン(漫画制作で背景や髪の毛に使用する、網点や背景が印刷されたフィルム状の画材)を使用せず、ペン一本で書き上げる作風は、この作品でも生き生きと表れており、それは表紙の絵を見ただけでもわかるでしょう。
本作「さんさん録」は、主人公の奥田参平の妻、鶴子が亡くなるところから始まります。
鶴子は生前、参平のことを「さんさん」呼び、参平は鶴子のことを「おつう」を呼び合う仲でした。
その鶴子が生前、書き留めていたのが『奥田家の記録』です。
そこには、生活録、炊事録、洗濯録、住居録、金銭録、親戚録、詩郎録、礼花録、乃菜録、そして最後に「さんさん録」が記されていたのでした。
これがこの作品のタイトルの由来です。
鶴子は、日常生活のすべてと言っていいほどの記録をつけていました。
それが、奇しくも「長い長い遺言」となってしまったのです。
物語は「さんさん録」第2巻へと続いていきます…。
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