マジック・ポイントのネタバレ、あらすじと感想を紹介します。
主人公の沢田ちえみはフリーの編集者です。
女性ファッション誌の仕事に携わっているますが、その仕事にも満足していません。
ちえみの妹、母、祖母ともに沢田家の女性は、みな美しく魅力的です。
これに反してちえみだけは、ごく普通の容姿で幼いころから劣等感を持ち続けています。
私生活では、塾講師の白井あきおと交際していますが、何だかうまくいかない日々。
そこに突然、大学院生の山根タカシが現れて…。
マジック・ポイントのネタバレ、あらすじ
Level 1 ふってきた男
主人公の沢田ちえみ(25歳)は、ごく普通の容姿のフリーの編集者です。
中野区にあるボロアパート「品方荘」で一人暮らしをしています。
塾の講師をしている白井あきお(27歳)と付き合っているちえみ。
ある日の夕食時にあきおは、ちえみの家に来ていました。
日々の忙しさから、コンビニで買ってきたものをそのまま食卓に並べたちえみ。
あきおは『わっかんないなー恋人にコンビニもん食わせる神経』とぶつぶつ言いながら食事をしています。
あきおの稼ぎはかなり良く、都内に親と同居する一軒家がありました。しかし一人暮らしの経験はないのでした。
ちえみは思います。『悪かない』『だけどあたしは最近こいつの前でブリブリするのに疲れてしまった』と。
ちえみにはモデルをしている超美人の妹、沢田エミ(19歳)がいます。
仕事でエミの撮影現場を訪れたちえみ。
そこでは、ちえみの元恋人でありカメラマンの野口三郎(28歳)が、エミの写真を撮っているのでした。
ボロアパートに帰宅したちえみは思います。
『あたしの仕事ってば まるで東京の雪みたいだ』
『ふってもふっても ほとんど積もったりしない』…。
と、突然天井を突き破って、上の部屋に住む大学院生の山根タカシ(23歳)がちえみの部屋に落ちてきます。
哲学科の学生で、頭を使うことが好きであるというタカシに、『へんなやつぅ』『でもけっこうハンサムだしィ』と思うちえみでした。
そしてちえみは、行きつけのオカマバーに行こうとタカシを誘います。
そこで深酒をして酔ったタカシは、『ボクはレンアイがしたい!!』『誰かにとって特別でありたい!!』と大声で叫ぶのでした。
さらにタカシは、人にはいろいろな持ち点があると続けます。
テレビゲームみたいに人の強さを、
そして美貌や男を口説く能力は、マジック・ポイントだと言い切ります。
そんなこんなで盛り上がっているオカマバーに、なんとエミが男達を引き連れてやってきます…。
Level 2 愛されたい!!愛されたい!!
ちえみは朝食をがんばって手作りしましたが、それを『当然てカオ』で食べるあきお。
『仕事なんてやめちゃえよ』とあきおから言われたちえみは、プロポーズと期待しますが、それは『オレのめんどうちゃんとみれないじゃん』との理由からでした。
その言葉にショックを受けるちえみ。あたしって、まるで便利屋さん?と思うのでした。
ちえみは日曜日、母の沢田フサエ(47歳)、祖母のヨネコ(72歳)そしてエミが暮らすマンションを訪ねます。
フサエからお金を借りるのが目的です。
沢田家の人々は、ちえみを除いてみな超美形なのでした。
母のフサエは保険の外交員をしていて、8ケタを稼ぐ「つわもの」です。
浮気をした夫と別れて女手ひとつでちえみとエミを育て、郊外にマンションまで買ったのでした。
祖母のヨネコは、町内会のおじいさん達にモテモテです。
ちえみはフサエから、『あんた悪い男にとっつかまってるね』と言われてしまいます。
ボロアパートに戻ったちえみは、ふと『あいつ…元気かな』とタカシのことを思います。
焼きおむすびを作って持って行くと、タカシは大喜びをするのでした。
『エミさんはボクにとって神です』とタカシは言います。
あせったちえみは、あの子は無理!!と返しますが、タカシは『神さまとはケッコンできないでしょ?』と答えます。
そして『ボクが好きなのはちえみさんです』と告げるのでた…。
Level 3 帆をかけてオヤジの海を渡る女
ちえみは行きつけのオカマバーにあきおと来ていました。
それは、あきおに別れたい気持ちを伝えるためでした。
そのことを伝えるとあきおは憤慨し、暴言、暴力までふるう始末。
そこにオカマバーの店員さゆりが止めに入り、ちえみはなんとか逃げ出すのでした。
実家のマンションへ、母フサエを訪ねたちえみ。
フサエからは『ちゃんと自分の足で立ちなさい』『そうすれば あんたは今よりもずっと魅力的になれる』と励まされます。
そして『物事を明るく見ること』『結婚すれば何かが変わるという期待を捨てること』と助言されます。
さらに『イヤなものにも必ずイイとこがあるのよ』と…。
そして唐突にフサエから、会ってほしい人がいると言われます。
フサエが再婚するのかという思いから、動揺を隠せないちえみでした。
昼間の公園に、ちえみとタカシの姿がありました。
今まで起こったことをタカシに伝えたちえみ。
『あたしっていったい何が好きなんだろ』とちえみ。
『それをこれから見つけていきましょう…ボクと一緒に…』と答えるタカシ…。
そこにとつぜん、あのあきおが現れます…。
マジック・ポイントの感想
この作品は、1993年に雑誌フィールヤング(祥伝社)に掲載されたものです。
原作に小説家の大原まり子先生をむかえた、岡崎京子女史の作品の中では異色と言える存在でしょう。
女史の「リバーズ・エッジ」や「へルタースケルター」等のディープな作品たちとは一味違った明るいテイストの作品です。
しかしながら色々と名言のつまった作品です。
ちえみの母フサエの『ちゃんと自分の足で立ちなさい』、『物事を明るく見ること』、『イヤなものにも必ずイイとこがあるのよ』は、読んでいてなんだか背筋がピンとしました。
タカシの『エミさんはボクにとって神です』、『神さまとはケッコンできないでしょ?』もいいえて妙です。
極論ですが、アイドル(idol=偶像)とも結婚はできません。
最近は「地下アイドル」なんて言葉もありますが、あくまで偶像なのですから。
話が変な方向にそれましたが、現実をしっかりととらえて、そこに楽しみを見つけていくこと。
そうすれば自然に「マジック・ポイント」は上がっていくものなのではないでしょうか。
ロールプレイングゲームの主人公がレベルを上げていくように。
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